傾きと通る点から1次関数を考える\(\require{enclose}\enclose{circle}{1}\)
まずはなじみのある典型的な問題を見てみましょう。
問題
傾きが \(2\) で点 \((3, \ 2)\) を通る直線の方程式を求め、\(xy\) 平面に図示せよ。
答案
求める直線の方程式を \(y=ax+b\) とすると、傾きが \(2\) であるから \(a=2\)
また、この直線は点 \((3, \ 2)\) を通るので
\begin{eqnarray}2=2\times 3 +b\end{eqnarray}
を満たす。これを解いて \(b=-4\)
よって、求める直線の方程式は
\begin{eqnarray}y=2x -4\end{eqnarray}
グラフは下図
関数をズラす
上で見た問題は、教科書にも出てくる基本問題ですね。ここまではしっかりできるようにしましょう。
さて、今回導入したいのは「関数をズラす」という考え方です。まずは具体例でみていきましょう。上の問題で扱った \(y=2x -4\) についてみていきます。 \(y=2x\) を基準としてみると
\(y\) 方向に \(-4\) ズレていることが分かります。これを\(y=2x-4\) は \( y=2x \) を \(y\) 方向に \(-4\) 並行移動したものであると表現できます。\(y\) 切片が \(-4\) であることからもこれは理解しやすいかと思います。同様に
\(x\) 方向に \(2\) ズレていることも分かるので、\(y=2x-4\) は \( y=2x \) を \(x\) 方向に \(+2\) 並行移動したものであるとも表現できます。
\(y\) 方向にズラす
\(y\) 方向への平行移動を考えてみましょう。 \( y=2x \) を \(y\) 方向に \(+2\) 並行移動させるとどうなるでしょうか。
\( y=2x \) の \(y\) の値が全体的に \(+2\) されているので \( y=2x+2 \) になりますね。これは感覚的に分かりやすいかと思います。では \(y\) 方向に \(-3\) 並行移動させるとどうなるでしょうか。
同様に、\( y=2x \) の \(y\) の値が全体的に \(-3\) されているので \( y=2x-3 \) になります。さいごに、ちょっと難しくして \(y\) 方向に \(+q\) 並行移動させるとどうなるか考えてみましょう。
\( y=2x \) の \(y\) の値が全体的に \(+q\) されているので \( y=2x+q \) になります。
仕上げに、今回は傾きを \(2\) で扱っていましたが、特別 \(2\) である必要はないので傾きを \(a\) として \( y=ax \) を \(y\) 方向に \(+q\) 並行移動させると
\begin{eqnarray}y=ax+q\end{eqnarray}
となることが分かりますね。
まとめ
\( y=ax \) を \(y\) 方向に \(+q\) 並行移動させると
\begin{eqnarray} y=ax+q\end{eqnarray}
となり、平行移動の情報が基準となる関数の末尾に \(+q\) の形で現れる。
\(x\) 方向にズラす
\(x\) 方向への平行移動を考えてみましょう。 \( y=2x \) を \(x\) 方向に \(+2\) 並行移動させるとどうなるでしょうか。
これだと分からないですよね。\(y\) 方向への平行移動と同様に \( y=2x \) の \(x\) の値が全体的に \(+2\) されていると考えて \( y=2(x+2) \unicode{x2234} y=2x+4\) としてもうまくいきません。図から \(y\) 切片が明らかに負ですから \(+4\) はおかしいと分かります。ではどうするか。ここで一度、傾きの意味を考えてみましょう。傾きとは
\(x\) が \(1\) 増加するときの \(y\) の増加量
のことです。 では傾きが \(2\) とはどういうことか。
\(x\) が \(1\) 増加するとき \(y\) が \(2\) 増加する
ということです。
これらはすべて傾きが \(2\) です。なぜなら \(x\) が \(1\) 増加するとき \(y\) が \(2\) 増加するというルールを満たしているからです。\(x\) が \(1\) 増加するとき \(y\) が \(2\) 増加するなら、\(x\) が \(2\) 増加するとき \(y\) は \(4\) 増加し、\(x\) が \(3\) 増加するとき \(y\) は \(6\) 増加するのです。傾きが同じ直線はすべて平行になります。ちなみに「傾き」と「変化の割合」はまったく同じ意味の言葉です。
さて、話を戻しまして \(x\) 方向への平行移動を考えてみましょう。ここで傾きの意味をしっかり理解していれば
このように \(y\) 方向への平行移動として考えることができます。というわけで、\( y=2x \) の \(y\) の値が全体的に \(-4\) されているので \( y=2x-4 \) になります。\(x\) 方向に \(+2\) 並行移動させた分の \(y\) 方向へのズレを \(x\) のズレ \(1\) につき \(y\) のズレ \(2\) の割合で計算しました。その雰囲気を出すために
\begin{eqnarray}y=2x-2 \times 2\end{eqnarray}
と書いておきましょう。では \(x\) 方向に \(-1\) 並行移動させるとどうなるでしょうか。
\( y=2x \) の \(y\) の値が全体的に \(+2\) されているので \( y=2x+2 \) になります。\(x\) 方向に \(-1\) 並行移動させた分の \(y\) 方向へのズレを \(x\) のズレ \(1\) につき \(y\) のズレ \(2\) の割合で計算しました。その雰囲気を出すために
\begin{eqnarray}y=2x-2 \times (-1)\end{eqnarray}
と書いておきましょう。さいごに、ちょっと難しくして \(x\) 方向に \(+p\) 並行移動させるとどうなるか考えてみましょう。
\( y=2x \) の \(y\) の値が全体的に \(-2p\) されているので \( y=2x-2p \) になります。\(x\) 方向に \(-1\) 並行移動させた分の \(y\) 方向へのズレを \(x\) のズレ \(1\) につき \(y\) のズレ \(2\) の割合で計算しました。その雰囲気を出すために
\begin{eqnarray}y=2x-2 \times p\end{eqnarray}
と書いておきましょう。ここで共通因数の \(2\) をくくりだすと
\begin{eqnarray}y=2(x-p)\end{eqnarray}
と書けます。
仕上げに、今回は傾きを \(2\) で扱っていましたが、特別 \(2\) である必要はないので傾きを \(a\) として \( y=ax \) を \(x\) 方向に \(+p\) 並行移動させると
\begin{eqnarray}y=a(x-p)\end{eqnarray}
となることが分かりますね。
まとめ
\( y=ax \) を \(x\) 方向に \(+p\) 並行移動させると
\begin{eqnarray} y=a(x-p)\end{eqnarray}
となり、平行移動の情報が基準となる関数の \(x\) に \(x-p\) の形で現れる。
\(y=ax\) を \(x\) 方向、 \(y\) 方向に並行移動させる
ここまでの話の総仕上げをしましょう。
1次関数 \(y=ax\) を \(x\) 方向に \(+p\)、 \(y\) 方向に \(+q\)並行移動させます。もう分かりますね。まず、\(y\) 方向に \(+q\) 並行移動させると平行移動の情報が基準となる関数の末尾に \(+q\) の形で現れるのですから
\begin{eqnarray} y=ax+q\end{eqnarray}
となります。次に、\(x\) 方向に \(+p\) 並行移動させると平行移動の情報が基準となる関数の \(x\) に \(x-p\) の形で現れるのですから
\begin{eqnarray} y=a(x-p)+q\end{eqnarray}
となります。
ついでに1次関数 \(y=ax+b\) を \(x\) 方向に \(+p\)、 \(y\) 方向に \(+q\)並行移動させると
\begin{eqnarray} y=a(x-p)+b+q\end{eqnarray}
です。平行移動のルールがだんだん分かってきましたね。
傾きと通る点から1次関数を考える\(\require{enclose}\enclose{circle}{2}\)
冒頭と同じ問題を平行移動の考え方を用いて解いてみましょう。
問題
傾きが \(2\) で点 \((3, \ 2)\) を通る直線の方程式を求め、\(xy\) 平面に図示せよ。
答案
求める直線の方程式は \(y=2x\) を \(x\) 方向に \(+3\)、 \(y\) 方向に \(+2\) 並行移動させたものだから、
求める直線の方程式は
\begin{eqnarray}y&=&2(x-3)+2 \\ &=&2x-4\end{eqnarray}
グラフは下図
この考え方は非常に強力ですので、難関校を目指す方はがんばって習得してください。
実践演習
準備中
コメント